■Amazonエディターレビュー 自らを文化的に象徴する息の長い楽曲を1曲でも作ることができたなら、たいていのポップスターは幸運かもしれない。けれども、ロバート・パーマーにとっては不運だった。スーツを完璧に着こなしたこの80年代の流行歌手は、脚線美を誇るファッション・モデルたちをバックに従えたMTVのビデオでの仮の姿によって、洗練されていると同時に、ヴァラティーに富んだキャリアの影がだいぶ薄くなってしまったのだ。だが、その「Addicted to Love」のビデオでしかパーマーのことを知らないならば、パーマーのことをまったく知らないと言ってほぼ間違いない。実際、それ以前の10年間にパーマーの見せたブルーアイド・ソウルのセンスは表面的なもので、その下には、ユーロ(「Give Me an Inch」)とシンセ(ゲイリー・ニューマンの「I Dream of Wires」)を取り入れたポップス、それにファンク、ニューオーリンズR&B、レゲエ、ロック、といったさまざまな要素が潜んでいた。けれども、スターぞろいのプロジェクト、パワー・ステーション(本作には「Some Like It Hot」や、思わず口ずさんでしまいそうなT.レックスのカヴァー曲「Bang A Gong」を収録)が商業的成功が約束されていながら、あまりにも短命に終わってしまったのは、そのせわしない創作意欲が原因のようだ。そして、「Simply Irresistible」とオルタネイティブ・ロック・ブームが実質的にパーマーのMTV時代の終わりを告げたのち、90年代の作品が、ソウル(マーヴィン・ゲイのメドレー「Mercy Mercy Me/I Want You」は聴き応えがある)や、感傷的な失恋歌、カリビアン音楽の影響、デルタ・ブルースといったパーマーのさまざまな側面を凝縮していたのも、おそらくその創作意欲ゆえかもしれない。本ベスト盤は、常にスタイルと内容がせめぎ合うパーマーのポップスを記録し、70年代中期から始まるその音楽遍歴をたくみにまとめ上げている。(Jerry McCulley, From Amazon.com)