虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ 4822243729 日経BP社
■Amazonエディターレビュー 成果主義を導入したものの、思ったように効果が出ないという企業の話を耳にすることが多い。社員側からすれば、収入が下がるリスクを冒してまで、難しいプロジェクトや長期間のプロジェクトに手を挙げる意味はない。 本書は、そんな成果主義を真っ向から批判し、日本型の年功制の利点を論じたものである。著者の高橋伸夫は経営組織論を専門とする経営学者であり、日本企業の意思決定原理や組織活性化を研究課題としている。また2002年には、日本経済新聞の「やさしい経済学」のコーナーに、日本型の人事に関する連載を行っている。そんな高橋が一貫して述べているのは、日本型年功制がいかに洗練されていてすばらしいものであるかということである。また、昨今急に“輸入”されたかにも見える成果主義であるが、その誕生は古く、現在では必ずしも欧米のスタンダードとされているシステムではないことも述べている。 本書を読んで分かるのは、日本型の人事システムとは、目先のお金で報いるシステムではなく、次の仕事で報いるシステムだということだ。また、若者が損をしがちな古くさいシステムのように言われているが、その成り立ちは極めて合理的だということも理解できる。難解な内容ではあるが、平易な語り口で書かれているので、理解に苦しむことはない。むしろ、人事システムを語るうえであまり問題にされてこなかった部分が見えてくるため、今までの成果主義や年功制に関する論争の事実誤認が分かってくる。 人事関連の仕事に就いている人はもちろんだが、経営のトップ、あるいは経営に参画している層の人に一読をおすすめしたい。本書は、人事システムの話だけではなく、外圧に右往左往しがちな、日本企業の経営全体に対する警鐘にもなっている。(朝倉真弓) |