パーフェクト・オペラ・ガイド オペラ通になりたいあなたのために 4276210526 音楽之友社
■Amazonエディターレビュー この本が対象とするのは、オペラについて一通りのことは知っていて、さらに知識を深めたいと思っている読者である。だから、作品のあらすじ、世界の歌劇場の紹介などは載っていない。そのかわり、ひとつのオペラが上演されるまでの過程、劇場の運営はどのように行われているのか、歌手、指揮者、演出家の仕事とは何かといったインサイダー的な興味、いわば舞台裏からの視点に力点が置かれている。かといって専門的になりすぎず、あくまでもファンのためのガイドたりえているのは、前島秀国ら著者陣が、個人的なオペラ体験、取材を通して知ったエピソードなどを交え、オペラを読者に身近なものにしようと心がけているからだろう。 ストーリー解説がないといっても、作品紹介のコーナーそのものがないというわけではない。50の名作がそれぞれ見開き頁で取り上げられ、舞台写真、推薦盤も掲げられている。ただし、並みのガイド本と違うのはラインアップの多様さだ。それほど上演機会の多くないもの(ロッシーニの「ランスへの旅」、ベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」)、20世紀の作品(オリヴァー・ナッセンの「かいじゅうたちのいるところ」、ジョン・ケージの「ユーロペラ1-5」)、一般にはミュージカルに分類されるもの(アンドリュー・ロイド=ウエッバーの「エビータ」、ミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」)がかなりの割合を占め、読者にさまざまなタイプのオペラを知ってもらいたいという意図が汲み取れる。 また、各作品の解説文も旧来のものと一線を画す。たとえば鳥と神々の戦争を描いたブラウンフェスルの「鳥たち」では、1991年にドイツ・ブレーメンの市立劇場でおこなわれた公演とともに、当時のドイツが直面していた政治問題(NATO域外への派兵をめぐる憲法改正)について詳しく述べられている。海外盤のDVDを楽しむための地域コードとテレビ方式の基礎知識、書籍・ウェブサイトの案内は中級ファンを意識した内容。簡潔な歌手・演奏家名鑑もついている。(松本泰樹) |