部下を愛しますか?それとも失いますか? 4916199251 産業編集センター
■Amazonエディターレビュー 本書のテーマは「優秀な人材の流出防止」に尽きる。それも、転職者はカネだけで動いていると信じて疑わない上司のために書かれた本である。 確かに給与に対する不満のみで会社を移る人もいるだろうし、実際のところ給与に関しては、直属の上司とはいえどうすることもできない。しかし、ほとんどの転職者は、自分の価値観と上司の価値観の不一致を理由に転職しているというのが、著者によるリサーチの結果である。では、上司が部下のためにしなければならないことや、してはならないこととは何か。この2点について、26の章に分けてガイドブック形式で説いているのが本書である。 本書の特徴は、退職時面談の事例と、優秀な人材を抱える企業の人材流出防止策の事例が多く掲載されている点にある。退職者が何に不満や不安を感じて退職を決意したかを知ることにより、事前に有効な対策を立てられるよう工夫されている。また各章には、「To Doリスト」として、部下のマネジメントに関するハウツーがまとめられており、より実践的な内容になっている。ただし、社内でピザを取っての食事会、週末出勤はペット同伴や子ども同伴を認めるなど、旧来の日本企業では受け入れにくい方針が、望ましい例として挙げられている。 いかにもアメリカらしい考え方であるが、日本企業も、若手が経営するベンチャーを中心に考え方が変わってきている。「自分はスーツに身を包むのが当然と思っていても、部下がTシャツとジーンズの方が働きやすいといったら、なるべくその希望をかなえてあげるべき」というのも、それで優秀な人材が能力を遺憾なく発揮してくれるのなら問題ないという合理的な考えが基盤となっている。日本の現実にはそぐわない部分もあるかもしれないが、部下の無能ぶりや会社に対する忠誠心のなさを嘆く前に、自分がマネージャーとして必要な行動をとっていたかや、部下を十分にサポートしていたかなどについて、自問するための一助となる本である。原題は『Love 'Em or Lose 'Em : Getting Good People to Stay』。(朝倉真弓) |