コンスタンティン・メーリニコフの建築1920s‐1930s 4887062176 TOTO出版
■Amazonエディターレビュー 1917年、レーニンによるロシア革命のダイナミズムのなかで、人々は古い因習を一蹴するパワーをもった新しい文化を模索した。美術に始まり、映画、ファッション、演劇そして建築も含めた大きな流れ――ロシア・アヴァンギャルド。しかし、1929年のスターリン独裁により状況は一変し、こうした文化のうねりはやがてかき消されていく。その悲劇の犠牲者の一人が建築家メーリニコフだ。30代前半でチャンスをつかみ、水を得た魚のように作品を作り続けている最中、資格を剥奪され、建築家生命を絶たれてしまう。今では巨匠と目される彼に、許された時間はわずか10年ほどしかなかった。 本書はメーリニコフのこの10年間における活動を紹介する日本初の作品集である。豊富なスケッチやドローイング、図面に、現況の写真が混ざることで、リアリティーをもった迫力を感じる。しかも構成主義といって連想される螺旋(らせん)、斜め、といったエレメントをはるかに凌駕する、多岐にわたるデザインボキャブラリーが、自らの「創造の泉」のみを信じた一人の天才が夢見たファンタジーの世界を描き出している。ほとんどすべての読者が初めて接するであろう、この多様性を知るだけでも本書の意義がある。一方で、それゆえか「もう終わりなの?」というもの足りなさを感じるのも確かであり、「続編を楽しみに待て」ということだと解釈したい。長く封印されてきたロシア建築の近未来が見え隠れしている。(中谷俊治) |